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現役の行政書士が、父親を亡くして知ったこと

遺言書はいらない? それともあったほうがいい? まずはこれだけ知っておきたい遺言書の全体像

遺言書はいらない? つくったほうがいい?

 

つくるかどうかはまったくの自由。

それが遺言書です。

 

私の父は、法的な意味での「遺言書」は残しませんでした。

 

それで困ったか? というと、

 

・・・私の場合にはそれほど困りませんでした。

 

私の父は遺言書のかわりに、いわゆるメモとか文章はたくさん残してくれました。メモ程度ですと遺言書のような法的効力はありませんが、結果的には家族がそのとおりに履行できたので大きなトラブルはありませんでした。

 

じゃあ必要ないかといわれると、そうはいいきれません。メモは散逸しているために内容をあたまのなかでつなぎあわせなければなりませんし、客観性もいまひとつです。そのため相続財産の確定などに手間取ったことは事実ですので、遺言書もあればより良かったと思っています。

 

 

一般的にも、「財産が少なくても」遺言書を残したほうがいいとか「仲が良くても」揉めるんだとかの話を聞きます。そこで、ひとまず遺言書の全体像を整理します。

 

 

遺言書の全体像を把握する

  

ご自身の親や自分にとって、遺言書が必要かどうかは、具体的にはどうやって考えればよいのでしょうか? 結論から言えば目的を決めることにつきます。

  

「こういうときには遺言書をつくったほうがいい」という推奨シチュエーションを例にとって考えてみます。

   

 

遺言書があったほうがよい場合 推奨8パターン

 

遺言書は、相続の相手(誰に)や割合(どれくらい)を指定することができるものです。こうした指定がないときは、相続人同士が話し合ったり、法律があらかじめ決めている基準をつかったりして財産がわけられることになります。

 

つまり成り行き任せにせず、積極的に財産のわけかたを指定しておきたいときや、指定しておいたほうが相続人たちが争わずにすむだろうといった配慮を示したい場合には、遺言書をつくっておくべきということです。

 

 

一般的には以下のような場合がこれにあたるといわれています。

 

 

1、子供がいない

子供がいない場合は、配偶者のほか、兄弟姉妹が相続権をもつため、あらかじめ遺言で取り決める方がよいとされています。

 

2、子供が多い

子供が多い場合に、相続財産のわけかたについて意見がまとまらなかったり、相続財産が分けづらかったりするため、あらかじめ遺言で取り決める方がよいとされています。

 

3、身寄りがない

全く身寄りがない方の相続財産は国に帰属しますが、あらかじめ遺言することで、例えば寄付などの指定をすることができます。

 

4、以前の配偶者との間の子供がいる

先妻の子と後妻の子などがおられると、争いになりやすいといわれています。

 

5、病気の相続人がいる

相続人の将来を心配して、遺言書で財産的な支援を定めておくことがあります。

 

6、連れ子がいる

連れ子は、法律上の親子ではないため、そのままだと相続する権利がありません。養子縁組という、法律上の親子として扱われる手続きをすれば相続できます。または遺言によって一定の遺贈をすることもできます。

 

7、相続人の仲がよくない

遺言書がない場合は遺産分割協議という、家族会議のようなものをすることで相続財産の分け方を決めます。これはたとえ日頃仲良くしている者同士であっても、難しい話し合いとなります。そこで特に財産の種類が多い場合などは、遺言書であらかじめ指定してしまうのも紛争予防のひとつのやりかたです。

 

8、相続人以外の人へ相続させたい

法律で決められた相続人ではない人にも、遺言すれば相続財産を譲ることができます。一種の寄付ですが、これを相続と区別して、遺贈(いぞう)といいます。

 

 

結局は「目的」による

 

どんなに鋭いカミソリも、丸太を切るには不向きです。

 

どんなにすぐれた道具も、目的に沿って用いなければその実力を発揮できないのです。

 

遺言書は法律文書であり、大きな財産を一通の書類で動かせるパワーを持っています。そのため上記のようなデリケートかつ実際的な活用場面が挙げられているのです。

 

たまに「自分の人生を振り返るため」などといった、精神性というか人生観のようなものを遺言書作成理由に挙げられる方もいます。

 

たしかに遺言書にはそういう効果もあるのかもしれませんが、もし、もっぱら気持ちの整理のような目的が理由なのであればたとえば自伝を書いて電子書籍にして出版する、などの方法だってあります。

 

遺言書はあくまでも財産の分割方法などを明確に約束できる、優れたツールです。その長所を理解したうえで持ち味を活かせるように選択するとよいでしょう。

 

 

遺言書は自分でもつくれる?

 

 

はい。

遺言書は自分でつくることができます。

 

遺言にも種類があり、一般的には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」がよく知られています。

 

自分が紙とペンで書く遺言書を、自筆証書遺言といっています。公証役場へ行って公証人に作成してもらうのが、公正証書遺言です。

 

それぞれ、どう違うのでしょうか?

 

自筆証書遺言は思い立ったときにいつでもつくれるので、手軽な形式といえます。

 

ただし形式的なルールをきっちり守らないとなりません。(簡単にいうと、全文を自書する、日付を自書でいれる、氏名を自書でいれる、押印する、という決まりがあります。)これがひとつでも間違っているとダメです。

 

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自筆証書遺言には、・・・

  • 全文を自書(手書き)する
  • 日付も手書きする
  • 氏名も手書きする
  • 忘れずに押印する

 というルールがあります。

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自筆証書の場合は裁判所の検認が必要になる

 

 

自筆の遺言が「形式的なルール」を守っているかどうかは、いつどこでジャッジされるのでしょうか?

 

実は、自筆証書遺言の場合は、本人が亡くなり、いざ遺言を実施しようとしたときに家庭裁判所の検認(けんにん)というものが必要です。検認とは、裁判所に開封してもらって遺言書を確認してもらう手続きです。相続人はこれに立ち会わないとなりません。

 

この手続きが終わらないと、相続人は遺言書にとりかかることができません。すこし思い切った言い方をすれば、自筆証書遺言は「そのままでは使えない」遺言書といえるかもしれません。

 

 

それに自筆ですと、どうしても改ざんや紛失の心配はつきものです。

  

 

やはり公正証書遺言がお勧め

 

 

そこで、もしも遺言書をつくるのであれば公正証書遺言がおすすめです。こちらは自筆とは違い、公証役場で作ってもらう遺言なので、内容面の間違いも起こりにくく、紛失の心配もほとんどありません。

 

 

人はいつ亡くなるかわからないため、意外と遺言書をしまった場所がわからなくなるものです。経験上、たくさんの遺品のなかから、一通の書類を見つけ出すのはとても苦労します。公正証書なら保管されますからその心配もいりません。

 

たしかに手間はかかりますが、もし本当に残したい遺言事項があるのなら、多少の手間はとってもやっておくべきではないでしょうか。

 

 

公正証書作成の手順とは?

 

1 公証役場を探す

 

まずはお近くの公証役場を検索しましょう。

 

公証役場は全国に約300か所あるので、日本公証人連合会のホームページで最寄りの場所を調べるとよいでしょう。どこの公証役場でなければならないという決まりはないので、任意に選ぶことができます。(ただし、病気などを理由に公証人に出張してもらう場合は管轄区域内に限られます)

 

2 前もって遺言内容と裏付け資料を準備する

 

公正証書は、たとえば今日頼んで今日できあがる、というものではありません。前もって公証人と協議を重ねてからの作成となります。

 

よって、準備するものとしてまずは遺言案を作成します。そちらをあらかじめ公証役場に連絡をとり、ファクスなど指示される方法で送付したり、修正をしたりといった原案作成の作業があります。

 

同時に、必要な資料を用意します。資料とはたとえば不動産を財産として特定するならば、その登記簿謄本をとっておくといったことです。

 

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主に以下のような資料が必要になるでしょう。 

・遺言者本人の印鑑証明書

・推定相続人との続柄がわかる戸籍謄本

・財産を遺贈する場合は受遺者の住民票や、法人の場合は法人の登記簿など

・財産の特定ができる資料(登記簿、固定資産税評価証明書、通帳の写しなど)

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実際には遺言の内容により必要な書類は違ってきますが、ようするにその遺言に書かれる当事者や対象となるものについて正確な記録を用意していくわけです。また、遺言者の遺言能力に疑義が生じないように、医師の診断書を求められるケースもあります。

 

3 証人2名以上をみつけておく

 

公正証書の特徴のひとつとして、証人があります。公正証書遺言の作成のためには、2名以上の証人の立会いが必要となっているのです。

 

 

ただしルール上、証人になれない人もいます。

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・未成年

・推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族

・公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人

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に該当する人は証人になれません。

 

 

証人を自分で用意する場合は、あらかじめ誰が証人になるのかを公証役場に伝えておき、作成日当日は本人かどうかの確認をするため、証人に身分証明書を持参してもらいます。また、証人の印鑑(認め印でも可)も必要です。

 

証人を自分で用意しない場合は、証人は公証役場で紹介をしてもらうこともできるので、どうしても知り合いに頼めなかったり、上記の証人になれない者に該当してしまうといった場合は、その旨もあらかじめ公証役場に申し出ます。(証人にたいして別途、日当が必要になります。) 

 

4 作成日に公証役場へ出向く

 

証人とともに作成日に公証役場に出向き、口授といって、公証人にたいして遺言者が遺言の趣旨を伝えます。ただ、ここまでの流れの中であらかじめ公証人には遺言の内容やその下書き案などが伝えられています。よって、必ずしも遺言内容を一言一句にわたって話さなければならないというわけではありません。

 

このようにして作成された公正証書に、遺言者と証人は確認のうえで各自署名押印をします。実務上、遺言者は実印で押印します。

 

5 費用は遺言の内容によって変わる

 

気になる費用ですが、公証役場に支払う手数料等が必要です。証人への日当や事前に書類を集めるときにかかる手数料などもあり、公正証書遺言の作成にかかる最終的な費用は一律ではなく、相続財産の金額や遺言の内容によってケースバイケースになります。

 

基本は「手数料+遺言加算」で計算

非常にざっくりといえば、ある基準で算出された手数料に、遺言加算を加えた数万円の費用がかかります。公証役場に支払う手数料は、該当のホームページなどで調べることができますが、目的の価額に応じて段階的に決まっています。

 

たとえば目的の価額が100万円までの場合はこれに応じる手数料は5千円ですが、200万円までの場合は手数料が7千円、500万円までなら11,000円、1000万円までだと17,000円、・・・という具合です。

 

「目的の価額」というのはこの場合、相続財産の、そのとき(公正証書作成時)の評価額のことです。現金ならそのままの金額ですが、たとえば不動産だったら固定資産税評価額を用いて評価額とします。

 

「目的の価額」は相続人ごとに計算される

ひとつの証書によって複数の相続人が財産を相続される(あるいは受遺者が遺贈される)場合、それぞれを別個の法律行為と考えるので、目的の価額も別々に計算し、合計していきます。

 

たとえば相続人が一人であれば、目的の価額に応じた手数料もひとつです。この場合は単純に「手数料と遺言加算の合計額」で決まりです。

 

ですが、子供二人にそれぞれ財産を分け、配偶者にも分けるという場合なら相続人は3名ですから、目的の価額も3つあることになり、それぞれについて手数料を割り出して合計します。

 

また、上記手数料に遺言手数料というものを加算します。これを「遺言加算」と言います。手数料は、遺言の目的の価額が1億円までだと11,000円です。

 

 

まとめ

  • 財産の分け方を指定したほうがいい場合は遺言をつくるべき

  • 遺言書は自分でもつくれる!
  • でもやっぱり公正証書のほうがおすすめ

  • 公正証書の作成にはちゃんとした準備(資料、下書き、証人)と費用が必要